ヨミエル

なんとなく ・ 「今朝、店のシャッターを上げていたら、向かいのクリーニング屋さんに「ここももう三十年だねえ」と言われました。私が実家の乾物屋に戻ってきてからも、もうそれくらいになります。 店は兄がやっていて、私は帳場と配達の手伝いです。兄とは仲もいいし、仕事が嫌なわけじゃありません。 この前、同窓会の案内が届いたんです。ハガキに近況を書く欄があって、「実家の店を手伝っています」と書こうとしたのに、なぜか書けなくて。まだ机の上に置いたままです。 昨日も昆布の箱を数えながら、あと何年こうしてるんだろう、って思ってしまいました。自分でもびっくりしました。別に辞めたいわけじゃないんです。かといって、何かやりたいことがあるわけでもなくて。 兄に話したら心配させそうだし、友達に話すほどのことなのかも分からないし。すみません、うまく言えなくて。 占いは普段あまり信じない方なんですけど、今回はちょっと聞いてみたくなりました。私、このままでいいんでしょうか。」

I

魔術師(逆位置)

魔術師

逆位置

長年続けてきた仕事と、自分の先行きを問い直すとき

Yomiel

魔術師の逆位置、か。このカード、力がないってことじゃないんだよ。むしろぼくには、力がちゃんとそこにあるのに、どこに向ければいいか分からなくて、手の中でじっとしてる感じに読めるよ。「実家の店を手伝っています」って書こうとして、書けなかった。それって嘘だから書けなかったんじゃなくて、それだけじゃ言い足りない気持ちが、ペンを止めたんじゃないかな。昆布の箱を数えながら出てきた問いも、三十年のシャッターも、ぜんぶ嘘じゃない。「辞めたいわけじゃない」も本当、「何かやりたいわけじゃない」も本当、それでも何か引っかかる、もそれも本当なんだよね。ぼくには、あなたが力を持て余してる、というより、その力がまだ名前を見つけてない途中に見えるよ。このままでいいか、ってカードに聞いたとき、カードが返したのは「どうしたい?」だった気がする。あなたはどう感じる?


Noir

……「手伝っています」って書けなかったのは、それが嘘だからじゃなくて——その続きが、まだ自分でも分からないから、じゃない?

今日のあなたへ

引いた一枚を、今日のどこかで思い出せたら、それだけで十分かも。 あなたに合う小さなものを、ぼくも今いっしょに探してる。もう少しだけ待っててね。

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